【2019年の小学校プログラミング教育】「未来の学び」はどうなっているのか?
日本国内では導入まであと1年となった「プログラミング教育」。すでに本格導入をしている学校もあれば、そうではない学校もあり、教職員のみなさまも師走を超えてもなお、心身ともに忙しい状況が続いているのではないでしょうか?
今回は、残り1年となった「プログラミング教育」の状況を整理し、これからはどのような準備が必要なのかについて解説したいと思います。
2018年の小学校プログラミング教育
あなたが既に学校教育に携わっている場合は、当たり前のことだと思いますが、まず、定義を明確にすれば、2020年のプログラミング教育の導入開始の対象となっているのは「小学校教育」です。
「プログラミング教育」の導入が含まれる、小学校や中学校の学習指導要領や幼稚園の教育要領の内容は、2020年に一斉導入されるのではなく、時期をずらしての導入となっています。それでは、どのタイミングで導入されるのかについて確認してみましょう。
新しい学習指導要領の全面実施スケジュール
以下は学習指導要領(幼稚園の場合は教育要領)が、実際の校務に反映されるタイミングを示しています。
幼稚園 :2018年度
小学校 :2020年度
中学校 :2021年度
高等学校:2022年度(年次進行で実施)
実のところ、幼稚園ではすでに昨年から新しい教育要領に切り替わっています。ですが、プログラミング教育という文脈では取り上げられてはいません。
それもそのはずで、幼稚園の教育要領にはプログラミング教育に関する記載はないからなのです。ですが、プログラミング教育に関連すると想定される基準もあることが確認できます。例えば総則には以下のような内容が追記されています。
幼稚園教育要領の追記部分(抜粋)
第2 教育課程の編成
各幼稚園においては、教育基本法及び学校教育法その他の法令並びにこの幼稚園教育要領の示すところに従い、創意工夫を生かし、幼児の心身の発達と幼稚園及び地域の実態に即応した適切な教育課程を編成するものとする。
第3 教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動など
人間関係
3 内容の取扱い
(3)幼児が互いにかかわりを深め、協同して遊ぶようになるため、自ら行動する力を育てるようにするとともに、他の幼児と試行錯誤しながら活動を展開する楽しさや共通の目的が実現する喜びを味わうことができるようにすること。
環境
3 内容の取扱い
(1)幼児が、遊びの中で周囲の環境とかかわり、次第に周囲の世界に好奇心を抱き、その意味や操作の仕方に関心をもち、物事の法則性に気付き、自分なりに考えることができるようになる過程を大切にすること。特に、他の幼児の考えなどに触れ、新しい考えを生み出す喜びや楽しさを味わい、自ら考えようとする気持ちが育つようにすること。
明文化こそされていないものの、追記部分には「創意工夫」や「新しい考え」などのキーワードが含まれています。推測するに、小学校教育への接続を強く意識しているものではないでしょうか。
反対に言うと、特に具体的な記述がないことから、対応は各幼稚園に定められており、一貫している教育方針は無いのが課題になっているとも考えられます。ですが、課題になる要因としては小学校でのプログラミング教育が本格稼働していない部分は多少なりともあると思われるため、今後の展開に期待しましょう。
話を元に戻して、2018年までの小学校教育はどのような状態だったのかと言えば、本格導入前の2年間の準備期間の前半となっていました。2017年の新しい学習指導要領の周知に伴い、2018年に教科書検定および新しい教育指導の先行実施などの試行錯誤の時期となりました。
では、2019年はどのような時期になるのでしょうか。
2019年の小学校プログラミング教育
前述のとおり、2019年はプログラミング教育本格導入直前の準備期間の後半戦となります。既にバズワード(あいまいなキーワード)となってしまいつつあるようにも思われますが、ここが最後の準備期間です。学校教育目標に合った教材の採択を行い、カリキュラムに反映を完了させるというゴールに向かわないといけません。ですが、課題はまだまだ山積みです。本格導入に際して、筆者が重要だと思われるポイントを3つ挙げてみました。
「何を学ぶか」ではなく「何ができるか」
活字にすると「そんなことか」と思ってしまいがちなのですが、重要なのは教育のゴール設定を明確化したうえで採択が必要であるということです。昨今はプログラミング教育をビジネスチャンスとして様々なツールが販売されたり、スクールが開講されたりと、日々新しい教材が増えています。ですが、世に出回っている多くのツール類は「何を学ぶか」を重要視しており、結果として「何ができるか」までを保証するものが存在しません。少々大げさな言い方にもなりますが、その理由は「何ができるか」を保証できるのは実際の校務に携わっている教職員のみなさましかいないからです。
ツールでは保証しきれないプログラミング教育の本質は、児童生徒たちと直接対話ができる教育のプロであるみなさまでないと達成できない部分であり、個々人の成長に合わせた適切な指導ができないという部分であることを理解したうえで、「何ができるか」を中心にして採択をしていく必要があります。
「1日を25時間」にする工夫
もちろん、そんなことはできません。ですが、カリキュラムマネジメントを行ううえで最低限意識しておきたい部分でもあります。
新しいカリキュラムを導入するにあたって、今回の学習指導要領の改訂は「変更」だけではなく「追加」の要素が多く既存の授業進行では時間が入らないことは既に顕在化している課題となっています。特にプログラミング教育では、従来のカリキュラム以上に「プログラミング」という要素に慣れ親しむ時間を捻出する必要があります。
カリキュラムマネジメント上、すでに余剰の時間はないことは明白です。そのため、各教科の中に、新しい要素を組み込む必要があるのです。その考え方として重要なのが「1日を25時間」にする工夫です。つまり、既存の重要な時間を残しつつ、時間を調整しながら新しい要素のための時間を捻出します。「それは十分に理解している」とおっしゃる方もいるとは思いますが、この1年間はいかに不可能を可能にするかを考える期間でもあります。学校内で解決できる問題なのか?はたまた学校外の協力も必要なのかを吟味し、トライ・アンド・エラーで調整を進めていく必要があります。
ICTを「当たり前」に受け入れる
最後はあなたが、もしくは周囲の方々がICTをいかに受け入れるかにかかっています。これは、学校内にICT機器を導入して使いこなすということも含まれていますし、なんと言っても、プログラミング教育がスムーズに進行できるようにすべてを受け入れる必要があります。
1年間もあればまだ十分に受け入れる余地はあります。筆者も新しい技術を当たり前のように講義するレベルに引き上げる際にはやはり2~3週間準備を行っています。もっと当たり前にするためには日頃から使いこなしている必要がありますが、人に教え手も恥ずかしくないレベルに至る、最低限の準備を行うにしても時間が必要なのです。
当たり前のことしか書いていませんが、この内容をしっかりと把握して準備を進めるにはかなりの時間と労力を要するのです。
早めの行動がカギ
ここまでで準備が重要であることは何度もお伝えしてきましたが、残念ながら2020年には100%完璧な状況で小学校プログラミング教育がスタートすることはないと筆者は考えています。理由としては教職員の方々の習熟度合いといったソフト的な問題もあると思いますが、学校内の設備や予算といったハード的な問題が混在しているからです。
ですが、過去のゆとり教育のように、将来を担う子どもたちが、「プログラミング教育の世代だから」と後ろ指をさされないように、教育する側としては全力で支援できる準備を進めていきましょう。そのためにも、教材などは早めに採択し、いち早く「当たり前」の状況が作り出せればと考えています。