【ざっくり分かる】STEM教育はプログラミング教育と何が違う?
教育に関心がある方であれば「プログラミング教育」というキーワードの他に「STEM教育」というものがあるということはご存知なのではないでしょうか?しかし、実際のところ、この2つの違いについては曖昧という方もいらっしゃるかもしれません。今回は、STEM教育の概要とプログラミング教育との違いを中心に解説します。
STEM教育とは
STEMは「Science」、「Technology」、「Engineering」、「Mathematics」の頭文字を取ったものです。理工学的分野にフォーカスした教育を推進することで、今後のグローバル人材を育成することを視野に入れた戦略とも言えます。
STEM教育は1990年代にアメリカ国立科学財団が提唱したSMETをルーツとしています。言葉の並びこそ違いますが、本質は変わらず、その後、当時のオバマ大統領が2009年に全米科学アカデミーでの演説にて、理数教育の重要性と、アメリカの科学技術の進歩、繁栄を提唱しています。アメリカではオバマ大統領就任後、年間数十億ドルもの予算を投下して、ICT教育設備の導入や、カリキュラムの強化を行ってきました。
STEM教育は発展し続けており、STEMの要素の他に芸術(Art)の要素を加えた「STEAM」や、環境(ecology)の要素を加えたeSTEMなど、科学技術と他分野を組み合わせた教育も登場しています。
プログラミング教育との違いは?
STEM教育は前述のとおり、科学技術を中心として各分野を強化することに主眼をおいた施策となっています。それでは次に、プログラミング教育との違いは何なのか?について解説します。
まず、日本国内で提唱している「プログラミング教育」とは、「AI時代に対応した人材を育成すること」がメインとなっています。「AI時代」という言葉が漠然としていますが、日本国内の教育においても、アメリカが進めるSTEM教育と同様に科学技術の発展に貢献できる人材の育成を見据えているものの、実際のところはもっと手前(もしくは、もっと手前の部分がフォーカスされている)にあると筆者は考えています。
文部科学省が作成しているレポートを見る限りでは、科学技術の発展ではなく「プログラミング的思考」の育成にあります。中高生の教育においてはまた別の観点は登場するものの、プログラミング教育のメインターゲットである小学生の段階から、英才教育を・・・ではなく「思考力を養いつつ、ICTに馴染んでもらう」というのが近しい表現かもしれません。
よって、扱っている教材は近しいものがありますが、結果として求めているものが異なっているのです。どちらが良い、悪いというわけではありませんが、明確な違いがあるということは理解していただけると良いでしょう。
日本におけるSTEM教育は、プログラミング教育の手段であり「その先」
日本では新しい学習指導要領によって、プログラミング教育が一般的なものになることは間違いありません。ただし、STEM教育という観点で捉えた場合は、また別次元の状況です。
プログラミング教育の一環として、STEM(特にプログラムやロボットが中心になっていますが)が扱われる傾向はしばらく続くでしょう。そして、アメリカと同様の科学技術を強化するためのSTEM教育は、その先のステップとして存在する状態にあり、先進国として考えた場合は、遅れている状況にあるのです。