【小学校プログラミング教育の手引き】学習活動の分類とは?

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新しい学習指導要領によって小学校のプログラミング教育は大きく変わろうとしています。ですが、まだまだ準備段階であるため各校とも導入に四苦八苦しているのではないでしょうか。

プログラミング教育の導入を統括する文部科学省では、教職員向けのセミナーやツール類の提供を進めるなかで、「小学校プログラミング教育の手引き」という冊子を提供しています。

この中にはプログラミング教育導入の背景や具体的な導入例などが示されていますが、この中で「学習活動の分類」というものが定義されています。

今回は「学習活動の分類」とは何か?分類毎の指導例について解説します。

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学習活動の分類とは?

今回のテーマとしている「学習活動の分類」は、新しい学習指導要領に明記されているものではありません。文部科学省では、学習指導要領に記載されていること以外の活動も通してプログラミング教育を行いたいという意図のもと「小学校での教育とそれ以外の活動」全体で、プログラミング教育を導入するタイミングを6つに分けて定義しています。

その6つのタイミングとは大分類と中分類に分けて以下のような構成となっています。

教育課程内のプログラミング教育

A分類:学習指導要領で例示されている単元等で実施するもの

B分類:学習指導要領に例示されていないが、学習指導要領に示される各教科等の内容を指導する中で実施するもの

C分類:各学校の裁量により実施するもの(A、B、D以外で、教育課程内で実施するもの)

D分類:クラブ活動など、特定の児童を対象として実施するもの

教育課程外のプログラミング教育

E分類:学校を会場として実施するもの

F分類:学校以外を会場として実施するもの

 

教育過程内外、学習指導要領の記載内外、学校内外など、幅広い領域で導入のタイミングを区分けしていることがわかります。実際に学習指導要領に記載されているのはA~D分類で、更にプログラミング教育に関する内容が明記されているのはA分類とB分類になります。

学習活動の分類と指導例

この記事を執筆している2018年1月現在の導入状況も参考にしながら、学習活動の分類と指導例について確認してみたいと思います。なお、指導例は、文部科学省も参画しているプログラミング教育のポータルサイトである「みらいの学び」に記載の実施事例も参考にしています。

 

A分類:学習指導要領で例示されている単元等で実施するもの

A分類は学習指導要領に記載されているので、指導イメージもつきやすいのではないでしょうか。

例えば、算数の場合「プログラミングを通して、正多角形の意味を基に正多角形をかく場面」という場合、児童は、正多角形の特徴をまず理解し、特徴をどのようにプログラムで表現すれば良いのかを考えます。正多角形の場合は、辺の長さや、次の辺を描くために向きを変えるための角度をプログラムに入力することが必要です。

正多角形を描くために必要なプログラミングのツールは様々なものが提供されていますが、有名なツールとして「Scratch」が挙げられます。Scratchには画面上のキャラクターに様々な動きをしてもらうための「指示」が書かれたカード(ブロック)が準備されているので、正多角形を描くために必要な指示を組み合わせることで目標を達成していくのです。

その他にも理科や総合の時間での取り組みも事例化されているので参考にしてみてください。

B分類:学習指導要領に例示されていないが、学習指導要領に示される各教科等の内容を指導する中で実施するもの

B分類も例示されていないという表現ではあるものの、一部記載があります。

例として挙げられているのは、音楽をプログラミングで作成するという内容。こちらもScratchを使って音楽を演奏するというもの。ただし、DTM(デスクトップミュージック)のような打ち込みの音楽演奏ではなく、一定のメロディーを「繰り返し」を使って演奏するなど、あくまでも「プログラミング」というエッセンスを用いたものとなります・

C分類:各学校の裁量により実施するもの(A、B、D以外で、教育課程内で実施するもの)

教育過程内の分類としては、ある意味いちばん難しい領域がこのC分類ではないでしょうか。

C分類には割り振られた教科が存在しないのです。筆者がこれまで小学校にICT教育を導入しようと切磋琢磨されている教員の方に聞いた話では、どこに「プログラミング的思考育成の時間」や「プログラミング」そのものに触れる時間を与えるのか?が課題という話を聞いています。

各学校の学校教育目標やプログラミング教育以外の学習指導要領を踏まえて授業時間を算出した場合、小学校に「プログラミング教育の時間」を取り入れるのは至難の業です。

では、余剰時間がない小学校教育においてどのようにプログラミング教育の時間を取れば良いのでしょうか?

現状で考えられるものとして有効なのは、各教科内に「プログラミング教育に繋がる要素」を入れていくしか無いでしょう。例えば、算数の時間においてScratchを使って図形を描くという時間をとるのであれば、その前の時間に「Scratchを使い倒す時間」を設けておくということです。

少々大げさな表現をすれば、目的もなく、ただただScratchをいじる時間にするのです。プログラミング教育においてはICTが当たり前の状態でないといけません。この記事を読んでいる方であれば、携帯電話は何も考えずとも電話をかけるという目標は達成できると思います。

これは人によるかもしれませんが、ある程度の基本操作であればマニュアルを読まずに直感的に操作できるはずです。これと同様に、ある程度操作を体験することで「なんとなくここを操作すれば動きそう」という勘所をつけてもらいます。この勘所が身についているか否かで、授業運営や目標達成が大きく変わります。

D分類:クラブ活動など、特定の児童を対象として実施するもの

D分類以降はクラブ活動にプログラミング教育の要素を導入するものですが、こちらは比較的導入は楽かもしれません。

クラブ活動の内容次第なところもありますが、例えば、運動系のクラブ活動であれば、生徒児童の活動結果をタブレットなどに入力したり、非運動系であれば、同じくタブレットを使って写真をとり、加工するなどの操作を活動の一環に加えます。ブログに日々の活動内容を記入し、公開するのも良いかもしれません。

E分類:学校を会場として実施するもの、F分類:学校以外を会場として実施するもの

E分類、F分類については民間企業が参入しやすい分類で、活動も盛んです。

ロボットやプログラミング言語を用いた体験教室は全国で行なわれていますが、活用のポイントはやはりアクティブ・ラーニングを通して児童生徒がICTを当たり前のものとできるか?または、授業の糧とできるかどうかにあるでしょう。もちろん、単純に体験を楽しむというゴール設定でも構いませんが、学習指導要領を加味した導入も忘れないようにしましょう。

プログラミング教育をどのように融合させるか?

新しい学習指導要領に挙げられている内容は「小学校教育に新しく科目を増やす」ものではなく、「小学校教育にプログラミング教育の要素を融合させる」という表現が正しいかもしれません。

また、融合した先には「何ができるようになったか?」という効果測定も重要なポイントになるでしょう。これまでの学習指導要領のように「何を教えるか」ではなく、結果主体となっていることを踏まえ、早急に各分類の検討を進めるべきと筆者は考えています。

追記:小学校プログラミング教育の手引(第三版)の発行について

2020年2月に小学校プログラミング教育の手引(第三版)が発行されました。

本格導入直前での改定となりますが、本質となる目的や教育の方向性について一切変更はありません。総合的な教育の時間に関する補足事項や、教育環境に関する補足、教員向けの事前研修に関する必要性の説明など、第二版から少々補足が加わった内容となっています。

こちらに関する動画もYouTubeチャンネルにアップしておりますので、ぜひご覧になってみてください。

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